役所の仕事は、口頭だけで進められるわけではありません。
政策を決めるまでの会議、検討資料、事業の実績、保存期間が過ぎた後の処理。こうした記録をどう作り、どう残し、どう捨てるのかを定めているのが、公文書管理法です。
前回扱った情報公開法は、「国民が行政文書を見せてください」と請求するルールでした。今回の公文書管理法は、その前提として、行政文書をきちんと作り、管理し、勝手に廃棄しないためのルールです。
今回は、公文書管理法の目的、行政文書の作成義務、行政文書管理規則、保存期間満了時の移管・廃棄、内閣総理大臣の同意、そして試験で狙われやすい「罰則規定の有無」を整理します。
公文書管理法と文書の作成・廃棄ルール
コタロー
先生! ニュースで「公文書が残っていない」とか「書類を捨てた」とか聞くことがあるよ。役所の書類って、職員さんが「もういらない」と思ったら自由に捨てていいものなの?
ワンブル先生
そこが今回のテーマだね。公文書管理法では、公文書を国民共有の大切な知的資源として扱っているんだ。だから、作る場面にも、管理する場面にも、捨てる場面にもルールがあるよ。
ここだけチェック
試験で迷いやすいところを先に並べておきます。
チェックリスト
- 公文書等は、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源である
- 行政文書は、意思決定の経緯や事務・事業の実績を跡付けられるように作成する
- 行政機関の長は、行政文書管理規則を定めなければならない
- 行政文書管理規則を定めたり変更したりしたときは、内閣総理大臣に報告する
- 行政文書の管理状況は、毎年度、内閣総理大臣に報告する
- 保存期間満了後の移管・廃棄には、内閣総理大臣との協議と同意が必要
- 公文書管理法には、違反した職員への罰則規定はない
公文書管理法の目的
公文書管理法は、公文書等を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけています。
ここで大事なのは、公文書が単なる役所の内部資料ではないということです。
行政がどのような資料をもとに、どのような議論を経て、どのような判断をしたのか。その記録が残っていなければ、あとから国民が行政の判断を検証できません。現在の国民に対する説明責任だけでなく、将来の国民が歴史的に検証するための資料としても、公文書は重要です。
だからこそ、公文書管理法は、文書を作る段階から、保存し、移管し、廃棄する段階まで、一定のルールを置いています。
行政文書の作成義務
公文書管理法では、行政機関の職員に行政文書の作成義務が定められています。
役所の職員は、経緯も何も残さずに「結論だけ決めました」とすることはできません。行政機関における意思決定に至る過程や、事務・事業の実績を、あとから合理的に跡付け、検証できるように文書を作成しなければならないのです。
たとえば、新しい政策を決める場合なら、検討資料、会議の記録、関係部署との調整内容などが問題になります。行政が「なぜその判断に至ったのか」を説明できるようにしておくことが、作成義務の中心です。
もっとも、すべての細かなやり取りを永久に文書化しなければならないわけではありません。公文書管理法は、処理に係る事案が軽微なものについては例外を認めています。
コタロー
結果だけじゃなくて、「どうしてその結論になったのか」まで残しておく必要があるんだね。
ワンブル先生
そう。公文書管理法は、あとから検証できる行政を作るための法律なんだ。
行政文書管理規則
行政文書は、作ったら終わりではありません。
行政機関の長は、その機関で行政文書を適切に管理するために、行政文書管理規則を定めなければなりません。
行政文書管理規則には、文書の分類、保存期間、保存方法、廃棄や移管の手続など、文書管理の基本ルールが定められます。各行政機関がバラバラに扱うと、公文書の管理が不安定になるため、機関ごとの管理ルールを明確にしておく必要があるのです。
そして、行政機関の長が行政文書管理規則を定めたり、変更したりしたときは、遅滞なく内閣総理大臣に報告しなければなりません。
ここは試験で、「行政文書管理規則を定めることができる」といった任意の表現にすり替えられやすいところです。行政機関の長は、行政文書管理規則を定めなければならない、という義務として押さえましょう。
保存期間が満了したらどうなるか
行政文書には、保存期間があります。
保存期間が満了した行政文書ファイル等は、大きく分けて「移管」か「廃棄」のどちらかに進みます。
歴史資料として重要な公文書等は、国立公文書館等へ移管されます。将来の国民が検証できるよう、歴史的価値のある文書として保存するためです。
一方、歴史的価値がなく、保存する必要がなくなった文書は廃棄されます。
ただし、ここで行政機関の長が独断で「これはもう捨てよう」と決められるわけではありません。
移管・廃棄には内閣総理大臣の同意が必要
行政機関の長は、保存期間が満了した行政文書ファイル等について、移管または廃棄をしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければなりません。
ここが、公文書管理法で最も狙われやすいポイントです。
「廃棄には同意が必要だが、移管には不要」と考えると誤りです。移管も廃棄も、内閣総理大臣との協議と同意が必要です。
なぜここまでチェックが入るのでしょうか。
行政機関が自分に不都合な文書を勝手に捨ててしまえば、あとから国民が行政の判断を検証できなくなります。そこで、行政機関の長だけの判断に任せず、内閣総理大臣の同意という外側のチェックをかけているのです。
管理状況の年次報告
行政機関の長は、行政文書の管理状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければなりません。
公文書管理法は、文書を作る義務や廃棄時の同意だけでなく、「各行政機関がどのように文書を管理しているのか」を継続的に把握する仕組みも置いています。
試験では、行政文書管理規則を定めたときの報告と、毎年度の管理状況報告が混ざりやすいところです。
行政文書管理規則を定めたり変更したりしたときは、遅滞なく内閣総理大臣に報告します。行政文書の管理状況については、毎年度、内閣総理大臣に報告します。
罰則規定はあるか
公文書管理法のひっかけで特に重要なのが、罰則規定の有無です。
結論からいうと、公文書管理法には、違反した職員に対する罰則規定はありません。
たとえば、行政文書の作成義務や、内閣総理大臣の同意を得るルールがあるからといって、公文書管理法の中に「違反した職員は懲役または罰金に処する」という刑罰規定が置かれているわけではありません。
もちろん、現実に不適切な文書管理があれば、職務上の責任や懲戒処分の問題になり得ます。しかし、それは公文書管理法そのものに刑罰があるという意味ではありません。
「公文書管理法には罰則規定がある」と出てきたら、誤りです。
コタロー
ルールが細かいから、違反したら公文書管理法でそのまま刑罰になるのかと思ってたよ。
ワンブル先生
そこが試験のひっかけだね。ルール違反が問題にならないという意味ではないけれど、公文書管理法自体には罰則規定がないんだ。
公文書のライフサイクル
最後に、公文書が作成されてから保存期間満了後の処理に進むまでの流れを、ひと続きで確認しておきましょう。
まず、行政機関の職員は、意思決定の経緯や事務・事業の実績を合理的に跡付けられるよう、行政文書を作成します。
次に、行政機関の長は、行政文書管理規則に基づいて文書を管理し、行政文書ファイル管理簿などによって保存状況を整理します。
そして毎年度、行政文書の管理状況を内閣総理大臣に報告します。
保存期間が満了したら、歴史資料として重要なものは国立公文書館等へ移管され、保存の必要がなくなったものは廃棄されます。この移管・廃棄には、あらかじめ内閣総理大臣との協議と同意が必要です。
行政文書ファイル管理簿とは
行政文書ファイル等の名称、保存期間、保存場所などを整理して管理するための帳簿です。行政文書がどこにあり、いつまで保存されるのかを把握する役割があります。
まとめ
公文書管理法は、行政の説明責任を支える土台です。
最後に、今回のポイントを整理します。
チェックリスト
- 公文書等は、国民共有の知的資源として扱われる
- 行政文書は、意思決定の経緯や事務・事業の実績を検証できるように作成する
- 行政機関の長は、行政文書管理規則を定める義務を負う
- 行政文書管理規則の制定・変更時には、内閣総理大臣に遅滞なく報告する
- 行政文書の管理状況は、毎年度、内閣総理大臣に報告する
- 保存期間満了後の移管・廃棄には、あらかじめ内閣総理大臣との協議と同意が必要
- 公文書管理法には、違反した職員への罰則規定はない