役所に出す「届出」は、役所が受理のハンコを押してくれないと効力が出ないのでしょうか。
また、役所が新しいルールを作るときは、必ず国民の意見を聴く手続、つまりパブリック・コメントをしなければならないのでしょうか。
この2つは、行政手続法の中でも条文そのものが問われやすいテーマです。今回は、届出の到達主義と、命令等制定手続・パブコメのルールを整理していきましょう。
届出・命令等制定手続・パブコメのルール
コタロー
先生! 引っ越しや開業のときに役所に出す「届出」って、役所が「受理しました」ってハンコを押してくれないと効力が出ないのかな? それと、役所が新しいルールを作るときは、国民の意見を聴く手続をやらなきゃいけないんだよね?
ワンブル先生
良い質問だね、コタローくん。届出は、役所のハンコを待つ必要はなく、役所の事務所に書類が届いた、つまり到達した瞬間に義務が完了するんだ。そして、行政手続法第6章のパブコメは、命令等を作るときに原則として必要になる法的な手続だよ。
ここだけチェック
チェックリスト
- 届出は、事務所に到達したときに義務完了。役所の受理は不要
- 申請は役所の応答が必要。届出は応答不要
- 命令等を定めるときは、原則としてパブコメが必要
- パブコメの対象は、法律に基づく命令・規則、審査基準、処分基準、行政指導指針の4つ
- 意見提出期間は原則30日以上。提出できるのは何人も
届出とは何か:役所の受理待ちは不要
申請と届出の決定的な違い
試験でよく混同されるのが、申請と届出の違いです。
申請は、役所に対して「許可をください」「認可してください」と求め、役所の側が許可するか拒否するかの応答、つまり処分をしなければならない行為です(行政手続法2条3号)。
これに対して、届出は、行政庁に対して一定の事項を通知する行為であって、役所の応答を求めるものではありません(行政手続法2条7号)。
到達主義(法37条)
届出書に必要な事項が正しく書かれ、必要な書類が揃っているという形式上の要件を満たしている場合、届出書が提出先の事務所に到達したときに、届出の手続上の義務が完了します(行政手続法37条)。
役所が「まだ受理していません」「審査中だから預かりです」と言ってきても、法律上は、形式上の要件を満たした届出が事務所に届いた時点で義務は履行されています。役所の受理を待つ必要はありません。
ただし、記入漏れや添付書類の不足など、形式上の不備がある場合は別です。この場合は、事務所に届いても、届出義務を果たしたことにはなりません。
たとえば、コタローが新しくカフェを開くため、保健所に開業の届出書を提出したとします。記載や添付書類に不備がなければ、窓口の職員が「今は忙しいから預かりね、来週受理するまで営業しちゃダメ」と言ってきても、法律上はすでに届出義務を果たしています。
ポイントは、役所の「受理」という内部的な処理を待つ制度ではない、ということです。
命令等を定めるときの意見公募手続
パブコメが必要になる4つの命令等
行政機関が、国民に関わるルールや基準である命令等を定めようとするときは、原則として意見公募手続、いわゆるパブリック・コメントを行わなければなりません(行政手続法39条1項)。
これは、行政が密室でルールを作ることを防ぎ、透明性を高めるための仕組みです。
行政手続法第6章のパブコメの対象となる命令等は、次の4つです(行政手続法2条8号)。
- 法律に基づく命令または規則
- 審査基準
- 処分基準
- 行政指導指針
審査基準とは、申請に対して許可するかどうかを判断する基準です。処分基準とは、不利益処分をするかどうか、またどのような処分にするかを判断する基準です。行政指導指針とは、同じような行政指導を複数の相手に行うときの共通ルールです。
パブリック・コメントの4大ステップ
パブコメの手順は、法律で次のように定められています。
- 案の公示:命令等の案と関連資料を、あらかじめ一般に公示します。
- 意見募集:公示の日から起算して原則30日以上の意見提出期間を定め、意見を募集します。提出できるのは、利害関係を問わず何人もです。
- 意見の考慮:提出された意見を十分に考慮しなければなりません。
- 結果の公示:命令等を定めたときは、公布と同じころに結果を公示します。
やむを得ない理由があるときは、その理由を明らかにしたうえで、30日未満の意見提出期間に短縮できます(行政手続法40条1項)。また、緊急時や金銭の額を定める場合など、一定の場合には、パブコメ自体を省略できることもあります(行政手続法39条4項)。
結果公示の3大トラップ
ステップ4の結果公示は、過去問がよく引っかけてくるポイントです。
まず、提出された意見は、そのまま全部載せる必要はありません。提出意見を整理・要約したものを公示することができます(行政手続法43条2項)。
次に、意見が1通も来なかった場合でも、提出意見がなかった旨を必ず公示しなければなりません(行政手続法43条1項3号)。
さらに、パブコメを実施した結果、そのルールを定めないことにした場合も、その旨を速やかに公示しなければなりません(行政手続法43条4項)。
たとえば、ある省庁が新しい省令を作ろうとして、案と資料を公示し、30日間、広く国民の意見を募集したとします。
集まった意見は十分に考慮したうえで最終案を決定し、結果を公示します。このとき、意見をそのまま全部載せる必要はなく、整理・要約したものでかまいません。
もし意見が1通も来なかった場合でも、「意見の提出はありませんでした」と公示する義務があります。「0件だから何も出さなくてよい」とはならないのです。
まとめ
チェックリスト
- 届出は、形式的要件を満たしていれば、事務所に到達したときに義務が完了する
- 届出では、役所の受理は効力発生の条件ではない
- 申請は役所の応答が必要。届出は応答不要
- 命令等を定めるときは、原則としてパブコメが必要
- パブコメの対象は、法律に基づく命令・規則、審査基準、処分基準、行政指導指針の4つ
- 地方公共団体が定める命令等には、根拠が法律であっても第6章は適用されない
- パブコメでは、案の公示、30日以上の意見募集、意見の考慮、結果公示という流れを押さえる
- 意見はそのまま全文公示ではなく、整理・要約したものでもよい
- 意見が0件でも、提出意見がなかった旨を公示しなければならない
- 命令等を定めないことにした場合も、その旨を速やかに公示しなければならない