役所がどんな仕事をして、どんな書類を持っているのか。
国民が「その行政文書を見せてください」と請求できる仕組みが、情報公開法です。
ただし、情報公開法は「何でも見せてもらえる法律」ではありません。誰が請求できるのか、どの機関に請求できるのか、どの文書が対象になるのか、不開示情報が含まれるときにどう処理されるのかが、細かく分かれています。
今回は、情報公開法の開示請求権者、対象機関、行政文書の定義、部分開示・裁量的開示・存否応答拒否、不開示処分への救済手続を整理します。
情報公開法と開示請求のルール
コタロー
先生! 国の役所にある書類を見たいとき、情報公開法で「見せてください」って請求できるんだよね。でも、日本の大人じゃないとダメなの? 外国人や未成年は請求できないのかな?
ワンブル先生
そこが最初の大事なところだね。情報公開法では、開示を請求できる人を「何人も」としているんだ。国籍や年齢、利害関係は原則として問われないよ。ただし、対象になる機関や文書にはきちんと線引きがあるんだ。
ここだけチェック
今回のポイントを先に並べておきます。
チェックリスト
- 開示請求権者は「何人も」で、外国人・未成年者・法人も請求できる
- 開示請求書に、請求の理由や利用目的を書く必要はない
- 情報公開法の対象は、国の行政機関と会計検査院が中心
- 地方公共団体は、情報公開法ではなく各自治体の情報公開条例で扱う
- 行政文書は、職務上作成・取得され、組織的に用いられ、行政機関が保有するもの
- 部分開示は義務、裁量的開示は行政機関の長の判断
- 存否応答拒否では、文書があるかないか自体を明らかにしないで拒否できる
誰が請求できるか
情報公開法は、行政機関の長に対して、行政文書の開示を請求できる人を「何人も」と定めています。
ここでいう「何人も」は、かなり広い言葉です。日本国民だけに限られません。外国人でも、未成年者でも、法人でも、法人格のない団体でも、開示請求をすることができます。
しかも、「その文書と自分に利害関係があること」までは求められません。行政の情報は、民主的な行政運営のために広く開かれるべきものだからです。
何人もとは
法律で「何人も」と書かれている場合、原則として「誰でも」という広い意味で使われます。情報公開法では、国籍・年齢・利害関係によって開示請求権者を限定していません。
理由や目的は書かなくてよい
開示請求書には、氏名・住所や、見たい行政文書を特定するための事項を書きます。
一方で、「なぜ見たいのか」「何に使うのか」という理由や目的を書く必要はありません。
ここは試験で狙われやすいところです。「開示請求には理由の記載が必要である」と出てきたら、誤りです。
なお、開示請求には手数料が必要です。無料で何でも請求できるわけではない点も、あわせて押さえておきましょう。
どこに請求できるか
情報公開法で開示請求の相手になるのは、国の行政機関です。
各省庁のような国の行政機関に加えて、会計検査院も対象になります。
他方で、地方公共団体は情報公開法そのものの対象ではありません。都道府県や市町村の文書を見たい場合は、それぞれの自治体が定める情報公開条例に基づいて請求します。
独立行政法人等についても、情報公開法そのものではなく、独立行政法人等情報公開法という別の法律で扱います。
国会や裁判所も、情報公開法上の行政機関ではありません。
コタロー
市役所の書類を見たいときは、情報公開法じゃなくて、その自治体の条例を見るんだね。
ワンブル先生
その通り。情報公開法、独立行政法人等情報公開法、自治体の情報公開条例を混同しないことが大事だよ。
行政文書とは何か
開示請求の対象になるのは、行政文書です。
行政文書とは、行政機関の職員が職務上作成し、または取得した文書・図画・電磁的記録で、行政機関の職員が組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているものをいいます。
ポイントは「組織的に用いるもの」です。
職員が仕事の参考として個人的に書いたメモや、個人の手帳にすぎないものは、組織として共有・利用されていなければ行政文書にはあたりません。
また、官報、白書、新聞、雑誌、書籍のように、不特定多数に販売する目的で発行されているものなども、情報公開法上の行政文書から除かれます。
行政文書とは
行政機関の職員が職務上作成・取得し、組織的に用いるものとして行政機関が保有している文書・図画・電磁的記録のことです。個人の備忘録や、市販されている書籍などは、ここから外れることがあります。
公務員の氏名や役職はどう扱うか
個人情報は、不開示情報になり得ます。
もっとも、公務員の職務遂行に関する情報については、透明性の観点から、役職や氏名が開示対象になる場合があります。
「個人情報だから、公務員の職務上の氏名は必ず不開示」と単純に考えると危険です。公務として誰がどの立場で関与したのかは、行政の説明責任と結びつくためです。
不開示情報が含まれる場合
行政文書に不開示情報が含まれているときでも、すぐに文書全体が不開示になるわけではありません。
ここでは、部分開示、裁量的開示、存否応答拒否を分けて押さえます。
部分開示
行政文書の中に不開示情報が含まれていても、その部分を容易に区分して除ける場合があります。
たとえば、個人情報にあたる部分だけを黒塗りにして、それ以外の部分を見せる場面です。
この場合、行政機関の長は、不開示情報を除いた部分を開示しなければなりません。部分開示は、行政の気分で「してもよい」ものではなく、要件を満たせば義務になります。
裁量的開示
裁量的開示は、本来なら不開示情報にあたる情報であっても、公益上特に必要があると認められるときに、行政機関の長が開示できる仕組みです。
部分開示が「開示しなければならない」場面なのに対して、裁量的開示は「公益のために、特別に開示できる」場面です。
存否応答拒否
存否応答拒否とは、開示請求された文書が存在するかどうか自体を明らかにしないで、開示請求を拒否することです。
たとえば、「特定の人物について捜査している資料はありますか」と聞かれた場合を考えます。
「あります」と答えれば、その人が捜査対象になっていることがわかってしまいます。「ありません」と答えることにも意味が出てしまいます。
このように、文書の有無を答えるだけで不開示情報を明らかにすることになる場合、行政機関の長は、文書の存否を明らかにしないまま開示請求を拒否できます。
存否応答拒否とは
文書が「ある」と答えても「ない」と答えても、不開示にすべき情報が外に出てしまう場面で、文書の有無そのものを明らかにせずに開示請求を拒否する仕組みです。
不服があるときの救済手続
開示請求をしたのに不開示決定を受けた場合、請求者は救済を求めることができます。
まず、審査請求をする方法があります。
審査請求があった場合、審査庁は原則として、情報公開・個人情報保護審査会に諮問します。第三者的な立場から、不開示決定が妥当かどうかを検討してもらうためです。
また、審査請求を経ずに、取消訴訟を提起することもできます。情報公開法の不開示決定については、必ず先に審査請求をしなければならない、という前置主義はとられていません。
諮問とは
行政機関が、専門的・中立的な機関に意見を求めることです。ここでは、不開示決定に不服がある場合に、情報公開・個人情報保護審査会へ判断材料を示して意見を聞く場面を指します。
判例:インカメラ審理の可否(最決平21.1.15)
不開示決定を裁判で争うとき、問題になるのが「裁判所は不開示文書そのものを直接見られるのか」という点です。
開示請求者からすると、裁判官が中身を見ないまま判断するのは不安です。そこで、裁判官だけが非公開で文書を見て、不開示情報にあたるかどうかを判断してほしい、という発想が出てきます。
これをインカメラ審理といいます。
最高裁は、情報公開訴訟において、法律に明文の規定がないまま裁判所が不開示文書を直接見分することはできないと判断しました。
たとえ開示請求者が「自分は立ち会わなくてよい」と言っても、裁判手続では、証拠の内容について当事者が弁論する機会を保障することが基本です。相手に見せないまま裁判所だけが文書を見る手続を認めるには、法律上の明文が必要だとされたのです。
一方で、審査請求段階の情報公開・個人情報保護審査会には、不開示文書を直接見て審査できる仕組みがあります。
裁判所は、法律上の明文がない限り不開示文書を直接見分できない。審査会は、法律上の権限に基づいて不開示文書を直接確認できる。この違いを押さえておきましょう。
インカメラ審理とは
裁判官だけが、当事者に見せない形で文書の中身を確認する審理方法です。情報公開訴訟では、法律に明文の根拠がないまま行うことはできないとされています。
まとめ
情報公開法は、行政の透明性を支える基本ルールです。
最後に、試験で迷いやすいポイントを整理しておきます。
チェックリスト
- 開示請求権者は「何人も」。外国人、未成年者、法人も含まれる
- 開示請求書に、請求理由や利用目的を書く必要はない
- 情報公開法の対象は、国の行政機関と会計検査院が中心
- 地方公共団体は条例、独立行政法人等は別法で扱う
- 行政文書は、職務上作成・取得され、組織的に用いられ、行政機関が保有するもの
- 個人の備忘録や市販の書籍などは、行政文書から外れることがある
- 部分開示は義務、裁量的開示は行政の裁量
- 存否応答拒否では、文書の有無自体を明らかにしない
- 不開示決定には審査請求も取消訴訟も使える
- 裁判所は、明文の根拠なく不開示文書を直接見分できない