行政行為は、単に「許可します」「認めます」と出されるだけとは限りません。
営業許可に「夜10時まで」と付けられたり、道路占用許可に「占用料を納めること」と付けられたりすることがあります。
このように、行政行為の本体にくっつく条件や制限を、行政法では附款と呼びます。
ただし、行政は何にでも自由に附款を付けられるわけではありません。附款を付けられる行政行為、付けてよい内容、違法な附款をどう争うかには、それぞれルールがあります。
今回は、附款の5つの種類と、試験で問われやすい限界を整理します。
行政行為の附款とその限界
コタロー
先生! 屋台の営業許可が下りたんだけど、許可証に「営業は夜10時まで」って書いてあるんだ。許可してくれるなら、もっと自由に営業させてくれてもよくない?
ワンブル先生
その「夜10時まで」という条件が、行政法でいう附款だよ。行政行為の本体に、追加の条件や制限がくっついているイメージだね。
ここだけチェック
今回のポイントを先に並べておきます。
チェックリスト
- 附款には、条件・期限・負担・撤回権の留保・法律効果の一部除外がある
- 条件は不確実な事実、期限は確実に来る事実にかからせるもの
- 負担は相手方に義務を課すもの。守らなくても本体の効力は自動では消えない
- 附款は原則として裁量行為に付けられ、羈束行為には付けられない
- 本体と切り離せる附款は単独で争える。負担はその代表例
附款の5つの種類
附款は、ざっくり「行政行為につけるおまけの条件」と考えると入りやすいです。
ただ、試験では名前の入れ替えがよく出ます。まずは5つの種類を、意味から押さえましょう。
条件
条件とは、将来起こるかどうか不確実な事実に、行政行為の効力をかからせるものです。
「雨が降ったら営業を停止する」「一定の施設が完成したら許可の効力を失わせる」というように、その事実が起こるかどうかがまだわからない場合です。
期限
期限とは、将来起こることが確実な事実に、行政行為の効力をかからせるものです。
「12月31日まで有効」「3年間だけ許可する」という場面をイメージするとわかりやすいでしょう。
条件と期限の違いは、その事実が「起こるかどうかわからない」のか、「いつか必ず来る」のかです。
負担
負担とは、行政行為の相手方に、一定の義務を課す附款です。
道路の占用許可に「占用料を納めること」と付ける場合が典型です。許可という本体とは別に、「お金を納めなさい」「設備を整えなさい」といった義務がくっつきます。
ここで大事なのは、負担を守らなかったからといって、本体の行政行為が自動的に消えるわけではないことです。
占用料を払わなかった場合でも、占用許可がその瞬間に当然失効するわけではありません。行政が「負担に違反したので許可を取り消す」と判断して、はじめて本体の効力が消えることになります。
撤回権の留保
撤回権の留保とは、「一定の事情が生じたら、この行政行為を撤回することがあります」と、あらかじめ行政が撤回の可能性を残しておく附款です。
たとえば、公の事業のために必要になった場合には許可を撤回する、とあらかじめ付けておくような場面です。
試験や教材では「取消権の留保」と表現されることもあります。ただ、行政行為が成立したあとに、後発的な事情を理由として効力を消す場面なので、行政法の整理としては撤回権の留保と押さえるのが自然です。
もっとも、撤回権を留保していれば、いつでも自由に撤回できるわけではありません。実際に撤回する場面では、公益上の必要性や相手方の不利益を考える必要があります。
法律効果の一部除外
法律効果の一部除外とは、法律上当然に発生するはずの効果の一部を、行政行為の中で除外する附款です。
たとえば、本来なら一定の給付や効果が法律上ついてくる場面で、「その一部は認めません」とするようなものです。
これは、法律が予定している効果を行政が一部削る強い処理です。そのため、他の附款と違って、法律上の根拠が必要とされます。
附款を付けられるのは裁量行為
附款は、行政が何にでも自由に付けられるわけではありません。
まず押さえるべき大原則は、附款を付けられるのは原則として裁量行為だという点です。
裁量行為とは、法律上の要件を満たしても、行政に「許可するかどうか」「どのような内容で認めるか」について判断の余地がある行政行為です。
行政に判断の幅があるなら、「全部は認められないけれど、条件付きなら認められる」という処理が許されやすくなります。
これに対して、羈束行為には原則として附款を付けられません。
羈束行為とは、法律上の要件を満たしたら、行政が必ずその行政行為をしなければならないものです。行政に判断の余地がないのに、勝手に条件を足すことは、法律が定めた要件を行政が追加することになってしまいます。
コタロー
裁量行為は、行政に判断の余地があるから条件付きで認めることもできる。羈束行為は、要件を満たしたら認めるしかないから、勝手に条件を足せないんだね。
ワンブル先生
いい整理だね。試験では「附款は羈束行為にも自由に付けられる」といった形でひっかけてくることがあるよ。
附款の内容にも限界がある
裁量行為なら、どんな附款でも付けてよいわけではありません。
附款も行政の判断である以上、行政行為の目的に沿っていなければならず、必要以上に重すぎてもいけません。また、同じような人を不公平に扱うことも許されません。
目的的限界
附款は、本体である行政行為の目的と関係していなければなりません。
飲食店の営業許可であれば、衛生や安全を守るための条件は目的に沿っています。ところが、営業許可と関係のない寄付や政治的な協力を求めるような附款は、目的を外れています。
本体の行政行為が何のためにあるのかを見て、その目的と附款がつながっているかを確認します。
比例原則
附款は、目的を達成するために必要な限度を超えてはいけません。
衛生を守るために必要な設備を求めることはあり得ます。しかし、その目的に比べてあまりにも重い義務を課すなら、比例原則に反する可能性があります。
比例原則は、「目的に対して手段が重すぎないか」を見る考え方です。
平等原則
同じような状況の人に、理由なく違う重さの附款を付けることも許されません。
同じ条件で営業許可を申請したAさんには軽い条件、Bさんには重い条件を付けるような扱いは、合理的な理由がなければ平等原則に反します。
違法な附款はどう争うか
附款が違法だと思ったとき、国民としては「許可本体は残したまま、理不尽な附款だけを消してほしい」と考えたくなります。
しかし、附款だけをいつでも切り離して争えるわけではありません。
附款が行政行為本体と一体になっていて、附款を外すと行政が本来予定していた内容と別物になってしまう場合、附款だけを独立して取り消すことは難しくなります。
この場合は、附款付きの行政行為全体を争うことになります。
一方で、附款が本体と切り離せる場合には、附款だけを独立して争うことができます。
その代表例が負担です。
負担は、本体の効力とは別に相手方へ義務を課すものです。本体の許可と独立して義務だけがくっついている性質があるため、負担の部分だけを取り消す訴訟を起こすことができると整理されます。
コタロー
「附款だけを取り消せるか」は、附款が本体と切り離せるかを見るんだね。負担は、本体とは別の義務だから切り離しやすい。
ワンブル先生
その通り。だから試験では、負担の特殊性がよく狙われるよ。負担は、自動失効しないこと、単独で争える代表例であることをセットで押さえよう。
まとめ
附款は、行政行為の本体にくっつく条件や制限です。
種類としては、条件、期限、負担、撤回権の留保、法律効果の一部除外があります。
条件と期限は、将来の事実が不確実か確実かで分けます。負担は、相手に義務を課すだけなので、違反しても本体の効力が自動で消えるわけではありません。
附款を付けられるのは、原則として裁量行為です。羈束行為では、行政が法律にない条件を勝手に追加できないため、原則として附款を付けられません。
さらに、裁量行為であっても、目的外の附款、重すぎる附款、不平等な附款は違法になります。
最後に、違法な附款を争う場面では、本体と切り離せるかがポイントです。負担は本体から切り離せる代表例として、単独で取消しを求めることができます。
チェックリスト
- 条件は、将来起こるか不確実な事実に効力をかからせる附款
- 期限は、将来起こることが確実な事実に効力をかからせる附款
- 負担は、相手方に義務を課す附款。違反しても本体は自動的には消えない
- 撤回権の留保があっても、無制限に撤回できるわけではない
- 法律効果の一部除外には、法律の根拠が必要
- 附款は原則として裁量行為に付けられ、羈束行為には付けられない
- 本体と切り離せる附款は単独で争える。負担はその代表例