【行政作用法】行政行為の4つの効力

前回は、行政行為を「許可・特許・認可」などに分けて、名前ではなく性質で見分ける練習をしました。

今回は、その行政行為が持つ効力を扱います。

行政から「税金を払ってください」「この建物を取り壊してください」という処分が出たとき、たとえこちらが「おかしい」と思っても、すぐに無視できるわけではありません。

行政行為には、民間同士の契約や請求にはない、少し特殊な力が認められているからです。

このページでは、試験でよく入れ替えて問われる4つの効力を、誰を縛る力なのかに注目して整理していきます。

行政行為の4つの効力

コタロー

先生! 役所から突然「税金を100万円払え」って通知が来たんだけど、絶対に計算ミスだと思うんだ。こんな間違った請求、無視してもいいよね?

ワンブル先生

コタローくん、そこは慎重にいこう。行政から出された処分は、たとえ違法だったとしても、正式に取り消されるまでは一応有効なものとして扱われるんだ。ここが民間同士のトラブルと大きく違うところだよ。

公定力のバリアを説明する4コマ漫画
行政行為は、間違っていても正式な手続きを踏むまでは有効として扱われます。

ここだけチェック

まず、全体像を並べておきましょう。

チェックリスト

  • 公定力は、違法な行政行為でも取り消されるまでは有効として扱う力
  • 不可争力は、期間が過ぎると国民側から取消しを争えなくなる力
  • 執行力は、法律の根拠がある場合に行政が自力で義務を実現できる力
  • 不可変更力は、裁決などについて行政庁自身があとから変更できなくなる力
  • 重大かつ明白な瑕疵がある行政行為は、公定力が問題にならず最初から無効になる

効力1:公定力

公定力とは、行政行為がたとえ違法であっても、権限のある機関によって正式に取り消されるまでは、一応有効なものとして扱われる力です。

ここで大事なのは、「違法でも正しい」という意味ではないことです。

行政の判断が間違っている可能性はあります。それでも、国民一人ひとりが「これは間違いだから従わない」と自由に判断できると、行政の仕組みが動かなくなり、社会が混乱してしまいます。

そこで、まずは有効なものとして扱い、不服がある人は取消訴訟などの正式な手続で争う、というルールになっています。

コタロー

つまり、間違った処分でも、勝手に「これは無効!」と決めつけて放置するのは危ないんだね。

ワンブル先生

その通り。公定力は、行政行為をとりあえず有効として扱う力なんだ。ただし、どんなにひどい処分でも必ず公定力が働くわけではないよ。

例外:無効な行政行為

公定力には例外があります。

行政行為の欠陥があまりにも大きく、しかも外から見て明らかな場合、その行政行為は最初から無効になります。

このような欠陥を、行政法では「重大かつ明白な瑕疵」といいます。

たとえば、すでに亡くなっている人に対して課税処分をするような場面を考えると、「これはおかしい」とすぐにわかります。このような極端な場合には、取り消されるまで有効という扱いをする必要がありません。

公定力と無効の違い
普通の違法は取り消されるまで有効。重大かつ明白な瑕疵がある場合は最初から無効です。
重大かつ明白な瑕疵がある行政行為の例
誰が見てもおかしいほどの欠陥がある場合は、最初から無効になります。

効力2:不可争力

不可争力とは、一定期間が過ぎると、国民側からその行政行為の効力を争えなくなる力です。

行政処分に不服がある場合、いつまでも取消訴訟を起こせるわけではありません。

取消訴訟は、原則として「処分があったことを知った日から6か月以内」に提起する必要があります。また、処分の日から1年を過ぎると、原則として訴えを起こせなくなります。

この期間を過ぎると、国民の側からは「その処分を取り消してください」と争うことができなくなります。これが不可争力です。

不可争力のタイムリミット
期間を過ぎると、国民側から取消しを争う道が閉じられます。

コタロー

じゃあ、期間が過ぎたら、行政も絶対にその処分を直せないの?

ワンブル先生

そこがひっかけポイントだよ。不可争力は、主に国民側から争えなくなる力なんだ。行政側が誤りに気づいて、自分で職権取消しをすることまで、いつも禁止する力ではないよ。ただし、次に見る不可変更力が働く特別な行政行為は別だね。

効力3:執行力

執行力とは、法律に特別な定めがある場合に、行政が裁判所の判決を待たずに、自ら義務を実現できる力です。

民間人同士の貸し借りでは、相手がお金を返してくれないからといって、勝手に相手の家電を持っていくことはできません。

まず裁判所で手続を取り、強制執行のルートに進む必要があります。

しかし、行政の場合は、法律に根拠があるときには、行政自身が義務の実現に動くことがあります。

典型例が、税金の滞納処分です。税金を滞納している人に対して、法律に基づき、財産の差押えなどが行われることがあります。

行政の執行力
民間同士なら裁判所を通す場面でも、行政は法律の根拠があれば自力で義務を実現できます。

効力4:不可変更力

不可変更力とは、行政庁自身が、自分でした行政行為をあとから取り消したり変更したりできなくなる力です。

これは、すべての行政行為に広く認められるものではありません。

行政が一度出した処分は、間違っていれば行政自身が職権で取り消せるのが原則です。

しかし、不服申立てに対する裁決のように、争いを判断して結論を出す行政行為では話が違います。

裁判の判決に近い性質を持つため、行政庁が「やっぱりさっきの判断はなし」と簡単に変えられると、紛争がいつまでも終わりません。

そこで、このような特別な行政行為については、行政庁自身もあとから変更できないものとされます。これが不可変更力です。

不可変更力の仕組み
裁決などでは、行政庁自身も自分が出した結論を簡単には覆せません。

コタロー

不可争力は国民側から争えなくなる力で、不可変更力は行政自身を縛る力。名前は似ているけど、縛られる相手が違うんだね。

ワンブル先生

いい整理だね。試験では、そこを入れ替えてくることが多い。誰に向けた制限なのかを見れば、かなり解きやすくなるよ。

4つの効力の見分け方

行政行為の効力は、名前だけを暗記しようとすると混乱します。

そこで、「誰を縛る力なのか」で整理します。

チェックリスト

  • 公定力は、国民や他の機関に対して、取り消されるまでは有効として扱わせる力
  • 不可争力は、期間経過後、国民側から取消しを争えなくする力
  • 執行力は、法律の根拠がある場合に、行政が自力で義務を実現できる力
  • 不可変更力は、裁決などについて、行政庁自身があとから変更できなくなる力
  • 無効は、重大かつ明白な瑕疵があるため、最初から効力がない状態

まとめ

行政行為の効力は、行政法らしさが強く出る分野です。

民間同士なら、納得できない請求には「裁判所で決着をつけよう」と言えます。

しかし行政行為では、公定力があるため、取り消されるまでは有効として扱われます。

さらに、期間が過ぎれば国民側から争えなくなる不可争力、法律の根拠があれば行政が自力で義務を実現できる執行力、裁決などについて行政庁自身も変更できなくなる不可変更力があります。

最後に、重大かつ明白な瑕疵がある場合だけは、そもそも公定力のバリアが張られず、最初から無効になる。

この流れで押さえれば、4つの効力のひっかけはかなり見抜きやすくなります。