前回、重い不利益処分の前には「聴聞」、それ以外の不利益処分の前には「弁明の機会の付与」が行われることを整理しました。
今回は、その手続の中身です。役所が持つ証拠資料を見せてもらえるのか、期日にどのようなやり取りをするのか、処分が出たあとに不服申立てはできるのか。試験で問われやすい違いを、順番に押さえていきましょう。
聴聞と弁明の違い・文書閲覧請求権
コタロー
先生! 前回、許認可の取消しみたいな重い処分には「聴聞」が行われるって習ったよね。具体的には、どんなやり取りをするの? 役所が持っている証拠資料って、こっちから見せてって言えるのかな?
ワンブル先生
いい疑問だね、コタローくん。聴聞は、口頭でのやり取りを中心とした手厚い手続なんだ。当事者には文書閲覧請求権も用意されている。ただし、これは弁明では使えない権利なんだよ。
ここだけチェック
チェックリスト
- 聴聞は、許認可等の取消しや資格・地位のはく奪など、重い不利益処分の前に行われる
- 聴聞では、当事者や参加人が口頭で意見を述べ、証拠書類を提出できる
- 聴聞では、当事者等に文書閲覧請求権が認められる
- 弁明は、原則として弁明書を提出する書面中心の手続
- 弁明には、聴聞のような文書閲覧請求権はない
- 行政手続法27条は、聴聞手続中の判断への審査請求を制限する規定であり、後に出された不利益処分そのものへの審査請求まで禁止するものではない
聴聞の準備:通知・代理人・参加人
聴聞を行うとき、行政庁はいきなり当事者を呼び出すことはできません。
まず、聴聞の期日や場所、不利益処分の原因となる事実、予定されている処分の内容などを、あらかじめ書面で通知します。処分を受ける可能性のある人が、何について争えばよいのかを知らないまま期日に呼ばれても、十分に防御できないからです。
当事者は、代理人を選ぶこともできます。代理人とは、本人に代わって聴聞に出席し、意見を述べたり資料を提出したりする人です。聴聞の代理人を選ぶのに、行政庁の許可は不要です。
また、処分の結果について利害関係をもつ第三者は、行政庁の許可を受けて、参加人として聴聞に参加できます。
聴聞では口頭で意見を述べられる
聴聞の期日では、主宰者が審理を進めます。
主宰者とは
主宰者とは、聴聞の期日における審理を進める担当者です。行政庁が指名し、当事者や参加人の意見を聞いたうえで、調書や報告書を作成します。
当事者や参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、証拠書類を提出できます。行政庁の職員に対して質問することもできます。
さらに、聴聞の期日に出られない場合などには、陳述書や証拠書類を提出することもできます。聴聞は「必ず口頭だけで戦う手続」ではなく、書面も使える手続です。
ただし、聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、原則として公開されません。公開の裁判のように、だれでも傍聴できる手続とは違います。
文書閲覧請求権は聴聞だけの特別な権利
聴聞で特に重要なのが、文書閲覧請求権です。
文書閲覧請求権とは、当事者や参加人が、不利益処分の原因となる事実を証明する資料について、閲覧を求めることができる権利です。
たとえば、営業許可を取り消そうとしている場合に、行政庁が「違反事実がある」と考える根拠資料を持っているなら、処分を受ける側は、その資料を見なければ十分に反論できません。そこで、聴聞では資料を見せてもらうための権利が認められています。
ただし、閲覧によって第三者の利益を害するおそれがある場合などには、閲覧が制限されることがあります。文書閲覧請求権があるからといって、行政庁の持つすべての資料を無制限に見られるわけではありません。
調書・報告書と処分決定
聴聞が終わると、主宰者は、聴聞の経過を記載した調書と、処分の原因となる事実に対する当事者等の主張についての意見を記載した報告書を作成します。
調書は、聴聞でどのようなやり取りが行われたかを記録するものです。報告書は、主宰者が聴聞を踏まえて、当事者等の主張をどう見るかをまとめるものです。
行政庁は、不利益処分を決定するとき、この調書と報告書を十分に参酌しなければなりません。
参酌とは
参酌とは、判断材料として十分に考慮することです。行政庁は主宰者の意見に必ず従うわけではありませんが、無視してよいわけでもありません。
ここでのポイントは、最終的に処分をするのは行政庁だということです。主宰者は審理を進め、調書・報告書を作成しますが、処分を決定する権限そのものを持つわけではありません。
聴聞手続中の判断には審査請求できない
聴聞手続の途中では、文書閲覧を認めるかどうか、参加を許可するかどうかなど、さまざまな判断が行われます。
行政手続法27条は、このような聴聞手続中の判断や不作為について、審査請求をすることはできないと定めています。聴聞の途中の細かな判断ごとに不服申立てができると、手続が止まってしまうからです。
ただし、ここで注意が必要です。行政手続法27条は、聴聞後に出された不利益処分そのものへの審査請求まで禁止する規定ではありません。
たとえば、聴聞を経て営業許可取消処分が出された場合、文書閲覧拒否のような聴聞手続中の判断については、独立して審査請求できません。しかし、最終的に出された営業許可取消処分そのものについては、要件を満たせば審査請求で争うことができます。
弁明の機会の付与は書面が原則
聴聞の対象にならない不利益処分では、弁明の機会の付与が行われます。
弁明は、行政庁が口頭ですることを認めた場合を除き、弁明書を提出して行うのが原則です。つまり、聴聞のように期日に出席して口頭でやり取りする手続ではなく、書面中心の簡易な手続です。
弁明でも、証拠書類などを提出することはできます。たとえば、「その違反は自分のものではない」「すでに改善措置をとっている」といった事情を、弁明書や資料で示すことになります。
一方で、弁明には、聴聞にある文書閲覧請求権はありません。ここが試験でよく問われます。
コタロー
聴聞は、口頭で意見を言えて、文書も見られる。弁明は、基本は書面で、文書閲覧請求権はないんだね。
ワンブル先生
その整理で大丈夫だよ。試験では「どちらの手続で何ができるか」を入れ替えて聞かれることが多いから、文書閲覧請求権は聴聞だけ、と強く押さえておこう。
まとめ
聴聞と弁明は、どちらも不利益処分の前に相手の言い分を聞くための手続です。
ただし、中身は同じではありません。聴聞は重い処分に対応する手厚い手続で、口頭審理、主宰者、調書・報告書、文書閲覧請求権がポイントになります。弁明は、原則として弁明書を提出する簡易な手続で、文書閲覧請求権はありません。
最後に、試験で問われる違いをもう一度整理します。
チェックリスト
- 聴聞は、重い不利益処分の前に行われる手厚い手続
- 聴聞では、当事者や参加人が口頭で意見を述べ、証拠書類を提出できる
- 聴聞の代理人は許可不要、参加人は行政庁の許可が必要
- 聴聞の期日における審理は、原則として非公開
- 文書閲覧請求権は、聴聞にだけ認められる
- 主宰者は調書・報告書を作成し、行政庁はこれを十分に参酌して処分を決定する
- 聴聞手続中の判断には審査請求できないが、聴聞後の不利益処分そのものには審査請求できる
- 弁明は、行政庁が口頭を認めた場合を除き、弁明書の提出が原則