今回は、行政組織法のうち、公務員に関するルールを扱います。
ニュースでよく聞く「懲戒免職」など、身近なようでいて、法律上はかなり特殊なルールで動いている分野です。
一般職と特別職の違い、分限処分と懲戒処分の違い、刑事裁判との関係など、試験委員が好むひっかけポイントを会社員との比較で整理していきましょう。
公務員の身分保障とペナルティ②
コタロー
先生! よく「公務員はクビにならないから安定している」って聞くけど、ニュースを見ていると「職員を懲戒免職にしました」ってやってるよね。結局、公務員ってクビになるの? ならないの?
ワンブル先生
いい着眼点だね、コタローくん。公務員は「全体の奉仕者」として中立・公平に働くために、普通の会社員よりも強い身分保障が法律で約束されているんだ。上司の気分次第でクビにされたら、政治家に忖度するようになってしまうからね。でも、それは「何をしても許される」という意味ではないよ。
ここだけチェック
公務員法の過去問では、「誰に国家公務員法が適用されるか」と「どの処分が分限・懲戒のどちらに属するか」がよく狙われます。
チェックリスト
- 国家公務員法が原則として適用されるのは一般職
- 特別職には、内閣総理大臣、国務大臣、裁判官、国会議員、自衛隊員などがある
- 分限処分は、能力・適性・健康状態などの問題に対応する処分
- 懲戒処分は、法律違反や非行などのルール違反への制裁
- 刑事裁判が進行中でも、目的が違うため懲戒処分を並行して行える
国家公務員法が適用される人
公務員と一口に言っても、全員が同じ法律で動いているわけではありません。
国家公務員は、大きく一般職と特別職に分けられます。
特別職: 特別な任務を持つ人たち
特別職には、内閣総理大臣、国務大臣、裁判官、国会議員、自衛隊員などがあります。
選挙で選ばれたり、三権分立に関わったり、国防という特殊な任務を担ったりするため、職務の性質が一般の行政職員とは異なります。
そのため、国家公務員法は原則として適用されません。裁判官には裁判所法、自衛隊員には自衛隊法というように、それぞれ別の法律でルールが定められます。
一般職: いわゆる普通の公務員
一般職は、特別職以外の国家公務員です。
各省庁で働く事務官、税務署の職員、出入国在留管理庁や労働局などで働く職員をイメージするとわかりやすいでしょう。
国家公務員法が適用されるのは、この一般職です。地方公務員の場合は、地方公務員法が中心になります。
コタロー
なるほど! 「国家公務員法は、すべての国家公務員に適用される」という選択肢が出たら、特別職がいるから誤りなんだね。
分限処分と懲戒処分
一般職の公務員は、法律に定める事由がなければ、本人の意に反して免職されたり、降任されたり、休職させられたりしません。
これが公務員の身分保障です。
ただし、どうしても職務を続けさせられない場合や、公務員として許されない行為をした場合には、処分が行われます。
その処分は、大きく分限処分と懲戒処分に分かれます。
分限処分: 能力・適性の問題
分限処分は、公務員としての能力や適性、健康状態などの問題に対応する処分です。
本人を責めるための制裁ではありません。このままでは公務が適切に回らないため、組織を守るためにやむを得ず行う処分です。
分限処分の種類は、免職、降任、休職、降給です。
チェックリスト
- 免職: 勤務実績が著しく不良な場合や、職務遂行に支障がある場合
- 降任: 今のポストの職務をこなす能力がないため、下の職に下げる場合
- 休職: 心身の故障で長期の休養が必要な場合や、刑事事件で起訴された場合
- 降給: 勤務実績が不良な場合
病気で長期間勤務できない職員を休職させる場面は、分限処分です。刑事事件で起訴された職員について、有罪確定前に休職扱いにする場面も、分限処分として整理します。
懲戒処分: ルール違反への制裁
懲戒処分は、公務員が法律に違反したり、職務上の義務に違反したり、公務員としてふさわしくない非行をした場合に行われる制裁です。
こちらは、本人のルール違反に対するペナルティです。
懲戒処分の種類は、免職、停職、減給、戒告です。
チェックリスト
- 免職: 最も重い処分で、公務員の身分を失わせる
- 停職: 一定期間、職務に従事させず、その間の給与も支給しない
- 減給: 一定期間、給与の一部を減額する
- 戒告: 将来を戒める文書上の厳重注意
横領や収賄などの悪質な非行があった場合は、懲戒免職が問題になります。職場での重大なハラスメントや無断欠勤なども、懲戒処分の対象になり得ます。
ワンブル先生
試験では、この2つを混ぜてひっかけを作ってくる。「心身の故障により休職させるのは懲戒処分である」と出たら、病気は分限だから誤り。逆に「横領をしたので降任させた」なら、非行は懲戒だし、懲戒処分に降任はないから誤りだね。
不服がある場合の救済
一般職の公務員が、不当な免職や停職などの不利益処分を受けたと感じた場合、救済手続があります。
国家公務員の場合は、人事院に対して審査請求をすることができます。地方公務員の場合は、人事委員会または公平委員会が対応します。
人事院は、中立的な立場から、その処分が本当に正しかったのかを審査します。
刑事裁判と懲戒処分
公務員が犯罪を犯した場合、刑事手続が進みます。
ここで試験によく出るのが、「刑事裁判が終わる前に、役所が懲戒免職などの処分をしてよいのか」という問題です。
刑事罰と懲戒処分は並行できる
ある公務員が、仕事とは無関係のところで罪を犯し、刑事裁判にかけられたとします。
職員は、「刑事裁判で裁かれているのに、役所からも懲戒処分を受けるのは二重処罰だ。裁判の判決が出るまで懲戒処分は待つべきだ」と主張するかもしれません。
しかし、刑事罰と懲戒処分は目的が違います。
刑事罰は、国家の刑罰権の行使です。懲戒処分は、公務員組織の秩序を維持し、国民の信頼を守るための制裁です。
目的が違うため、二重処罰にはなりません。同一事件について刑事裁判が進行中であっても、役所はそれを待たずに懲戒処分をすることができます。
コタロー
裁判が終わるまでクビにできない、というわけではないんだね。組織の秩序維持という別の目的がある以上、役所は独自の判断で懲戒処分できるんだ。
まとめ
公務員は、上司の気分でクビにされないように強く守られています。
一方で、公務員は国民全体に奉仕する立場にあるため、法律に基づく厳しいルールも課されています。
試験本番では、次のチェックリストを思い浮かべて、ひっかけの選択肢を見破ってください。
チェックリスト
- 国家公務員法は、特別職には原則として適用されず、一般職に適用される
- 分限処分は、心身の故障や成績不良など、能力・適性の問題に対応する
- 分限処分の種類は、免職・降任・休職・降給
- 懲戒処分は、法律違反や非行など、ルール違反への制裁
- 懲戒処分の種類は、免職・停職・減給・戒告
- 同一事件でも、刑事裁判を待たずに懲戒処分をすることができる
- 一般職が不利益処分を受けた場合、人事院などに審査請求できる