行政不服審査法には、審査請求・再調査の請求・再審査請求という3つのルートがあります。それぞれをいつ使えるのか、そして申請したのに役所がずっと放置している「不作為」に対しては誰が文句を言えるのかを整理していきましょう。
不服申立ての3つのルート
コタロー
先生! 役所にカフェの営業許可を申請したのに、何か月も返事がなくて放置されているんだ。近所の常連さんが「私が代わりに不服申立てをしてあげる」って言ってくれたんだけど、第三者が代わりに文句を言ってもいいのかな?
ワンブル先生
コタローくん、その常連さんの優しさは嬉しいけれど、法律上はできないんだ。処分に対する審査請求なら利害関係のある第三者もできる場合があるけれど、「不作為(放置)」に対する審査請求は申請した本人しかできないと厳格に決まっているんだよ。今日は不服申立ての3大ルートと、不作為の独自ルールを整理しよう。
ここだけチェック
チェックリスト
- 異議申立ては廃止され、審査請求に一元化された
- 再調査の請求・再審査請求は、個別法の定めがある場合だけ使える
- 再調査の請求は任意選択(審査請求を選んでも自由)
- 不作為についての審査請求は、申請をした者しかできない
- 不作為に対して再調査の請求はできない(審理員手続は適用される)
審査請求・再調査の請求・再審査請求のマップ
かつての法律には「異議申立て」という制度がありましたが、平成26年の大改正で廃止され、不服申立ての手続は審査請求に一元化されました。現在は、次の3つの類型が定められています。
審査請求(法2条〜4条)は、不服申立ての基本となる原則ルートです。処分庁に上級行政庁がある場合は最上級行政庁へ、上級行政庁がない場合は処分庁自身へ申し立てるのが原則です。
再調査の請求(法5条)は、処分を出した役所自身にもう一度調べ直してもらう手続です。個別の法律に「再調査の請求ができる」と書いてある場合に限って利用できます。再調査の請求ができる場合であっても、それを使わず最初から審査請求を選ぶことも自由です。ただし、不作為に対して再調査の請求をすることはできません。
再審査請求(法6条)は、審査請求の裁決をもらった後、さらに別の行政機関に審査をやり直してもらう手続です。これも個別の法律に特別な定めがある場合に限り認められます。
過去問では「行政不服審査法には、処分の不存在確認の申立てが認められている」という選択肢が出ることがありますが、そのような申立ては認められていません。審査請求、再調査の請求、再審査請求の3つだけです。
「不作為」に対する審査請求の3大鉄則
申請をしたのに、役所がいつまで経っても許可も不許可も出さずに放置している状態を不作為といいます。この不作為に対して審査請求をする場合、通常の処分とは異なる3つの鉄則があります。
鉄則1:誰ができる? → 申請者本人に限定(法3条)
処分に対する審査請求は、処分を受けた本人だけでなく、処分によって不利益を受ける法律上の利益を持った第三者も申し立てることができます。しかし、不作為に対する審査請求は「法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者」しか申し立てることができません。第三者がどれだけ利害関係があっても、代わりに審査請求することはできません。
鉄則2:不作為に「再調査の請求」はできるか? → できない(法5条)
再調査とは、一度出された処分を調べ直す手続です。まだ何も処分を出していない不作為の状態では、調べ直す対象がそもそも存在しません。そのため、不作為には再調査の請求は使えず、最初から審査請求をするしかありません。
鉄則3:不作為でも「審理員」の手続はあるか? → ある
行政不服審査法では、公平中立に審査するため、処分に関わっていない職員から審理員を指名して審理を進めます。この審理員による手続は、不作為についての審査請求であっても除外されておらず、適用されます。
コタローが保健所にカフェの営業許可を申請したものの、標準処理期間の2週間を過ぎても、2か月、3か月と何の音沙汰もない場面を考えてみましょう。コタローのファンである近所の住民が「私が代わりに不作為の審査請求をしてやる」と申し出ても、申請をした者本人ではないため、この申立ては認められません。
コタロー自身が保健所の上級機関である都道府県知事に対して不作為についての審査請求を提出すれば、適法に受理されます。審理は省略されることなく審理員が指名され、保健所に対してなぜ放置しているのかの調査が進められます。放置が違法と認められれば、知事から「速やかに申請に対する処分を出しなさい」という裁決が下されます。
まとめ
不服申立ての基本ルートは審査請求です。再調査の請求と再審査請求は、個別の法律に定めがある場合だけ使える例外的なルートとして整理しましょう。
不作為については、処分に対する審査請求とは違う独自ルールがあります。申請者本人だけが請求できること、再調査の請求は使えないこと、不作為でも審理員手続は適用されることが、試験で特に狙われるポイントです。
チェックリスト
- 不服申立ての基本:異議申立ては廃止され、審査請求に一元化された
- 再調査の請求:処分庁に見直しを求める制度。個別法の定めがある場合のみ可能。任意選択
- 再審査請求:裁決後の二段構え。個別法の定めがある場合のみ可能
- 不存在確認:処分の不存在確認の申立ては認められていない
- 不作為の請求権者:不作為について審査請求できるのは申請をした者に限定される(第三者は不可)
- 不作為と再調査:不作為に対して再調査の請求はできない
- 不作為と審理員:不作為についての審査請求でも、審理員の手続は適用される