【行政不服審査法】審査請求の要件・提出先・期間のルール

役所から不利益な処分を受けたとき、いざ審査請求をしようとしても、手続のルールを知らないと門前払い(却下)にされてしまいます。誰が審査請求できるのか、複数人や代理人で請求するときのルール、どこにいつまでに出せばよいのかを、それぞれの理由とセットで整理していきましょう。

審査請求、誰が・いつまでに・どこへ

コタロー

先生! ニュースで「果汁10%なのにジュースって書いてあるのはズルい!」って怒っている消費者団体を見たよ。こういう一般の消費者も、役所の決定に対して審査請求できるのかな? それと、審査請求の期限って「知った日から3か月」って聞くけど、初日は数えるのかな?

ワンブル先生

とても実践的な疑問だね、コタローくん。審査請求は国民の権利を守る大切な制度だけど、誰でも文句を言えるようにすると行政がパンクしてしまうから、「法律上の利益」がある人に絞っているんだ。さらに「総代は3人まで」「知った日の翌日から3か月」など、数字のルールにもすべて理由がある。今日は門前払いを防ぐための必須ルールを整理しよう。

主婦連ジュース事件を説明する4コマ漫画
一般消費者の利益は「反射的利益」にすぎず審査請求はできない

ここだけチェック

チェックリスト

  • 審査請求には「法律上の利益」が必要。反射的利益では不服申立適格なし(主婦連判例)
  • 総代は3人まで選べる。取下げだけは総代にはできない
  • 代理人は特別の委任があれば取下げができる(総代とは異なる)
  • 審査請求期間は、知った日の翌日から3か月、処分の日の翌日から1年
  • 不作為についての審査請求には期間制限がない

誰が審査請求できるのか:不服申立適格

審査請求ができるのは、誰でもよいわけではありません。行政庁の処分によって、自己の権利または法律上保護された利益を侵害された者(不服申立適格を持つ者)に限られます。

判例:主婦連ジュース事件(最判昭53.3.14)

公正取引委員会は、果汁がわずかしか入っていない清涼飲料水であっても「〇〇ジュース」と表示してよいという業界の公正競争規約を認定しました。これに対し、消費者団体である主婦連合会が「不当表示だ、認定処分を取り消せ」と不服申立てをしました。

争点は、一般消費者を代表する消費者団体に、この処分を争う不服申立適格があるかどうかです。

最高裁判所は、主婦連合会には不服申立適格がなく、不服申立ては不適法と判断しました。

景品表示法が不当表示を禁止しているのは、市場の公正な競争を確保して一般消費者の利益を保護するという公益を守るためです。一般消費者が正しい表示によって受ける利益は、法律が直接個人の権利として保護しているものではなく、公益保護の結果として生じる反射的利益にすぎません。したがって、単なる一般消費者には、処分の取消しを求める法律上の利益は認められないとされました。

コタロー

「消費者が騙されないようにする」のは法律の目的だけど、それは社会全体のため(公益)であって、特定のAさんやBさんの個人的な権利を守るためじゃないから、おこぼれ(反射的利益)扱いになっちゃうんだね。

主婦連ジュース事件の判例漫画
景表法は公益保護の法律であり、消費者の利益は反射的利益にとどまる
法律上の利益と反射的利益の比較表
単なる反射的利益では不服申立適格は認められない

なお、「〇〇PTA」や「〇〇同好会」のように法人格を持たない団体であっても、代表者または管理人の定めがあるものは、その団体の名で審査請求をすることができます(法10条)。

総代と代理人のルール

多くの人が共同して審査請求をするときや、弁護士などに頼むときには、それぞれ独自のルールがあります。

総代(法11条)は3人まで

多数人が共同して審査請求をするときは、自分たちの中から3人を超えない総代を選ぶことができます。大人数で全員が好き勝手に手続をすると意見がまとまりませんが、代表を1人だけにすると、その人が倒れたときに困りますし、独断専行のリスクもあります。そこで、多数決も取れて意見もまとめやすい奇数の最小限として、3人までとされています。

総代が選ばれたら、共同審査請求人は総代を通じてのみ行為ができます。行政庁は、総代が2人や3人いても、そのうち1人に通知すれば全員に通知したことになります。

代理人(法12条)は特別の委任があれば取下げも可能

審査請求は、代理人(弁護士など)に頼んで行うこともできます。代理人は、審査請求人のためにほとんどすべての行為ができますが、審査請求の取下げをするには特別の委任が必要です。

総代と代理人では、取下げのルールが異なります。総代は取下げだけは絶対にできませんが、代理人は特別の委任さえあれば取下げができます。取下げは、不利益な処分を確定させてしまう重大な行為なので、いずれの場合も本人の意思を厳格に確認する仕組みになっているのです。

取下げには特別の委任が必要
総代は取下げができないが、代理人は特別の委任があれば取下げができる

審査請求はどこに出すのか

過去問で細かく問われるのが、審査請求書をどの行政庁に出すのかというルールです。処分を出した本人(処分庁)に文句を言っても意地を張る可能性があるため、客観的な第三者である上司(最上級行政庁)にチェックしてもらうのが原則です(法4条)。

処分庁に上級行政庁がある場合は最上級行政庁へ、上級行政庁がない場合は処分庁自身へ提出します。国税庁長官や特許庁長官などの「庁の長」が処分庁である場合は、上級行政庁である大臣ではなく、当該庁の長自身が審査庁になります。税務や特許は高度な専門知識が必要なため、政治家である大臣よりも専門家である庁の長自身に判断させた方が的確だからです。主任の大臣が上級行政庁である場合は、当該主任の大臣が審査庁になります。

審査請求書は、本来の審査庁だけでなく、処分を行った処分庁を経由して提出することもできます(法21条)。処分庁を経由して提出された場合、処分庁は直ちに本来の審査庁に書類を送付しなければなりません。このとき、審査請求期間の計算は処分庁に審査請求書を提出した時を基準に判定されます。

ワンブル先生

もし「大臣のところに書類が届いた日」でカウントされたら、県庁の机の上で書類が放置されたり郵送が遅れたりしたせいで、期限オーバーになって却下される危険があるよね。だから、国民が処分庁の窓口に出した瞬間でセーフにしてあげる仕組みなんだよ。

審査請求の提出先を整理する図解
上級行政庁の有無と処分庁の種類で、審査請求の提出先を見分けます

審査請求の期間

審査請求のタイムリミットの計算方法は、数字の暗記だけでなく起算日にも注意が必要です。

処分に対する審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内、処分があった日の翌日から起算して1年以内にしなければなりません。どちらか一方が経過した時点で、原則として審査請求はできなくなります。民法と同様、初日はカウントせず翌日から数え始めます(初日不算入)。

処分庁に対して再調査の請求を先にした場合は、再調査の決定があったことを知った日の翌日から起算して1か月以内という特例になります。もし再調査の請求をしたのに、処分庁がいつまでも決定を出さずに放置した場合は、再調査の請求をした日の翌日から起算して3か月を経過したときは、決定を待たずに直ちに審査請求をすることができます。

不作為に対する審査請求には、期間制限が一切ありません

コタロー

処分は終わったことだから早く決着をつけるために期限があるけど、不作為は役所が今まさにサボり続けている現在進行形だもんね。サボっている役所が「3か月過ぎたからもう文句言うな」なんて言えるわけがないから、期間制限がないんだ。

審査請求期間のまとめ
不作為には期間制限がなく、経由提出は処分庁到達時で計算される

書式と補正命令

審査請求は、証拠関係や争点を明確にするため、原則として審査請求書という書面を提出しなければなりません(法19条)。口頭で行えるのは、法律等に特別の定めがある例外だけです。

審査請求書に書き漏れや押印漏れなどの不備があった場合、審査庁はいきなり門前払い(却下)にしてはならず、相当の期間を定めて補正を命じなければなりません(法23条)。国民の救済のチャンスを奪わないためです。補正命令に従わなかった場合や、最初から期間を過ぎていて直しようがない場合は、審理員の手続を経ることなく、直ちに裁決で却下することができます(法24条)。

補正命令の義務
補正できる不備がある場合、審査庁は補正を命じなければならない

まとめ

審査請求では、まず「誰が請求できるか」を確認します。法律上の利益がない人は請求できず、総代と代理人では取下げの可否も異なります。その上で、適切な審査庁へ期限内に提出することが必要です。書面に直せる不備がある場合には、補正の機会が与えられる点も押さえておきましょう。

チェックリスト

  • 不服申立適格:法律上の利益が必要。一般消費者の利益は反射的利益にすぎず適格なし(主婦連判例)
  • 法人でない社団:代表者・管理人の定めがあればその名で請求可能
  • 総代の人数:選べるのは3人まで。選任後は各自の単独行為は不可。取下げは総代自身もできない
  • 代理人の取下げ:特別の委任があれば取下げができる(総代とは異なるルール)
  • 提出先の特例:国税庁長官等の「庁の長」の処分は、専門性重視で庁の長自身が審査庁
  • 経由提出の特例:処分庁を経由して提出した場合、処分庁に提出された時に請求がされたとみなす
  • 審査請求期間:知った日の翌日から3か月、処分の翌日から1年(初日不算入)
  • 再調査経由の期間:決定を知った日の翌日から1か月(3か月放置されたら直ちに審査請求可)
  • 不作為の期間:不作為に対する審査請求には期間制限がない
  • 補正命令:不備があっても直せる場合は、チャンスを与えるため補正を命じなければならない