【行政不服審査法】行政不服審査と行政訴訟の違い

役所から納得のいかない処分を受けたとき、私たちは裁判所に訴えることもできますし、行政に対して「もう一度見直してください」と不服を申し立てることもできます。

では、この2つは何が違うのでしょうか。

特に大事なのは、行政訴訟では「違法」かどうかを争うのに対し、行政不服審査では「違法」だけでなく「不当」まで争えることです。今回は、行政不服審査と行政訴訟の違い、自由選択主義、一般概括主義、適用除外の考え方を整理していきましょう。

行政不服審査と行政訴訟の違い

コタロー

先生! 役所から納得のいかない営業停止処分を受けちゃったんだ。すぐに裁判所に訴えるべき? それとも、役所に「考え直してください」って不服申立てをするべきなのかな?

ワンブル先生

とても大事な疑問だね、コタローくん。日本の法律では、裁判所と行政のどちらを先に選んでもよい自由選択主義が原則なんだ。ただ、裁判所は基本的に「違法」を判断する場所だけれど、行政不服審査なら「不当」な処分まで見直せる。ここが大きな違いだよ。

裁判と不服審査の違いを説明する4コマ漫画
裁判所は違法性を判断し、行政不服審査では不当な処分も見直せます。

ここだけチェック

チェックリスト

  • 訴訟と審査請求のどちらを選ぶかは原則自由
  • 行政事件訴訟は違法性を審査する
  • 行政不服審査は違法だけでなく不当も審査できる
  • 行政不服審査は、簡易迅速かつ原則無料の救済手続
  • 一般概括主義により、原則としてすべての処分・不作為が対象になる
  • 行政不服審査法7条の適用除外は、理由づけで整理する

救済法の全体像と自由選択主義

国民が行政活動によって権利や利益を侵害されたときの救済方法は、大きく2種類あります。

1つは、処分そのものを覆す争訟による救済です。行政機関に見直しを求める行政不服審査と、裁判所に処分の取消しを求める行政事件訴訟がここに入ります。

もう1つは、お金で埋め合わせる金銭による救済です。違法な行政活動による損害を賠償してもらう国家賠償と、適法な行政活動によって特別の犠牲を受けた場合の損失補償がここに入ります。

処分に不服がある国民は、行政不服審査法による審査請求と、行政事件訴訟法による取消訴訟のどちらを先に選んでも原則自由です。これを自由選択主義といいます。

ただし、法律に「まず審査請求をしなければ訴訟を提起できない」と特別の定めがある場合は例外です。これを審査請求前置主義といいます。

行政不服審査と行政訴訟の最頻出比較

試験で最も狙われるのが、行政不服審査と行政事件訴訟の比較です。

行政不服審査は、行政機関が判断します。審査対象は、違法だけでなく不当も含まれます。手続は簡易迅速で、費用は原則無料です。

行政事件訴訟は、裁判所が判断します。審査対象は、基本的に違法性です。手続は慎重で、印紙代などの費用もかかります。

行政不服審査と行政訴訟の比較表
不当まで審査できるかどうかが、行政不服審査と行政訴訟の大きな違いです。

なぜ行政不服審査は不当まで審査できるのか

裁判所は、法律に違反しているかどうかを判断する機関です。そのため、行政の裁量の範囲内にとどまっている処分について、たとえ少し不適切に見えても、ただちに取り消せるわけではありません。

これに対して、行政不服審査を行うのは行政内部の機関です。行政内部だからこそ、「法律違反とまではいえないけれど、今回の処分はやりすぎで不適切だ」といった政策的・専門的な妥当性まで踏み込んで見直すことができます。

このような、違法ではないが不適切な状態を不当といいます。

不当な処分の取消し
行政内部の判断だからこそ、不当な処分も取り消すことができます。

たとえば、コタローが経営する飲食店で、衛生管理の書類提出がうっかり1日遅れてしまい、役所がいきなり重い営業停止処分を下したとします。

裁判所では「法律上許される範囲に入っているので違法とまではいえない」と判断されることがあります。しかし、行政不服審査では「初めての軽いミスに対して、いきなり重すぎる処分をするのは不当だ」として、処分が取り消される可能性があります。

不当処分に対する不服申立てのドラマ
裁判所で違法とまではいえない場合でも、不服審査なら不当として見直せることがあります。

原則なんでも争える一般概括主義

昔の制度では、法律に書かれたものだけを不服申立ての対象とする列記主義がとられていました。

これに対して、現行の行政不服審査法は一般概括主義を採用しています。一般概括主義とは、原則としてすべての処分や不作為を審査請求の対象にし、例外的に対象外となるものだけを法律で列挙する考え方です。

行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為について不服がある者は、原則として審査請求をすることができます(行政不服審査法2条)。また、法令に基づく申請をしたのに、行政庁が相当の期間内に何もしない不作為についても、審査請求の対象になります(同法3条)。

継続的な実力行使、たとえば人の収容や物の留置など、公権力の行使に当たる事実上の行為も、処分に含まれることがあります。

ワンブル先生

「法律に不服申立てができると書いてある処分に限り申し立てられる」という選択肢が出たら注意だよ。原則として広く対象にして、例外だけを外すのが一般概括主義なんだ。

一般概括主義のイメージ
個別に列挙するのではなく、原則としてすべての処分や不作為が対象になります。

適用除外は理由で整理する

一般概括主義の例外として、行政不服審査法が使えない処分が7条に定められています。

ここは丸暗記になりやすいところですが、「なぜ除外されているのか」という理由で整理すると覚えやすくなります。

他に適正な手続があるもの

まず、他に適正な司法手続や独立した手続が用意されているものは、行政不服審査の対象から外れます。

たとえば、裁判所・裁判官が行う処分や裁判の執行について、行政機関に審査請求をすることはできません。三権分立の観点から、行政が裁判所の判断を見直すのはおかしいからです。

また、検察官・警察官などが刑事事件や国税犯則事件に関して行う処分も、刑事訴訟法などの手続で争うべきものとして、行政不服審査法の対象から外れます。

国会の両院・議員の議決による処分や、会計検査院の検査官会議で決すべき処分も、行政不服審査になじまないものとして除外されています。

性質上、行政不服審査になじまないもの

次に、性質上、簡易迅速な行政不服審査になじまないものも除外されます。

たとえば、学識技能に関する試験・検定結果についての処分です。試験の採点結果を行政不服審査で一つひとつ審理し直すのは、制度の性質に合いません。

学校や養成所などで、教育・訓練の目的でされる処分も除外されています。教育現場の判断に委ねるべき場面が多いからです。

外国人の出入国や帰化に関する処分も、国の主権や高度な政策判断に関わるため、行政不服審査法の対象から外れます。

また、国の機関や地方公共団体が、その固有の資格において相手方となる処分についても、行政不服審査法は適用されません(同法7条2項)。

この7条の適用除外は、処分だけでなく不作為についても適用されます。たとえば、外国人の出入国に関する申請について行政庁が応答しない場合でも、行政不服審査法による不作為の審査請求はできません。

適用除外のロジック
裁判所の処分や試験結果などは、性質上、行政不服審査の対象外となります。

まとめ

行政不服審査は、行政事件訴訟よりも簡易迅速に使える行政内部の救済手続です。最大の特徴は、違法だけでなく不当まで審査できることにあります。

ただし、すべての行政活動に使えるわけではありません。原則は広く対象にする一般概括主義ですが、裁判所の処分や試験結果など、性質上なじまないものは適用除外として整理しておきましょう。

チェックリスト

  • 自由選択主義:訴訟と審査請求のどちらを選んでも原則自由
  • 行政事件訴訟は、基本的に違法性を審査する
  • 行政不服審査は、違法だけでなく不当も審査できる
  • 行政不服審査は、簡易迅速かつ原則無料の救済手続
  • 一般概括主義により、原則としてすべての処分・不作為が対象になる
  • 適用除外は、他に適正な手続があるもの、性質上なじまないものという理由で整理する
  • 公務員の懲戒処分に不服がある場合は、各公務員法に基づいて人事院や人事委員会への審査請求を行う